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01意匠とは
意匠とは、物品のデザイン(物品の形態、見た目)です。
物品の「部分」のデザイン、建築物や内装のデザインも保護され得ます。
意匠法で保護される意匠は原則として有体物ですが、物品に記録・表示されていない「画像」も2020年4月から保護対象となりました。
なお、意匠法では「意匠」を次のように定義しています。
(意匠法2条1項)
この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。
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02意匠登録のメリット(意匠権を取得する意味)
意匠登録をすれば、他者が無断でその意匠を模倣した製品・商品を製造販売する行為を差し止めたり、模倣行為(意匠権の侵害行為)により生じた損害の賠償をさせたりできます。
また、意匠権は、同一の範囲だけでなく、類似する範囲にも効力が及びます(類似範囲も保護されます)。
詳しくは意匠登録のメリット・デメリットをご覧ください。
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03意匠登録と特許の違い
大きく、保護対象(権利化する対象)に違いがあります。
意匠登録では、物品(製品・商品)のデザイン(見た目)が保護されます。
一方、特許は、発明(アイディア。技術的な思想)が保護対象となります。
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04保護対象となる意匠(物品)の例
下記はあくまで例示です。
市場(しじょう)で取引きされる物品のデザインであれば、意匠法の保護対象となり得ます。
ご自身の意匠(製品・商品)が保護対象となるか否かがわからない場合は無料の意匠相談をご利用ください。
- ■被服・装飾モノ
- 洋服 / 下着 / かばん / ベルト / ネクタイ / 靴 / 帽子 / 時計 / 宝石 / 化粧品 / 指輪 / ネックレス / ブレスレット / ピアス / ライター / 携帯ケース / キーホルダー etc.
- ■生活用品モノ
- 寝具 / 家具 / 文具 / 食器 / 生活雑貨 / 日用品 / 防災グッズ / 掃除用具 / お風呂グッズ / 洗濯用具 / 照明器具 / 運動用具 / 消耗品 / 台所用品 / 収納グッズ / ペット用品 etc.
- ■家電・趣味モノ
- カメラ / ラジオ / パソコン / ケイタイ / 楽器 / おもちゃ / スポーツ用品 / 自転車用品 / カー用品 / バイク用品 / ガーデニング用品 / キャンプ用品 / 旅行グッズ etc.
- ■産業器具モノ
- 調理用器具 / 照明器具 / 医療用機械器具 / 電子器具 / 安全機械器具 / 農業用機械器具 / 漁業用機械器具 / 事務用機械器具 / 化学機械器具 / 建設用器具 etc.
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05保護対象とならない意匠(物品)の例
意匠は、物品の形態です。
そのため、例えば下記のような「物品」に該当しないモノのデザインは意匠法の保護対象となりません。
- 無体物(「画像」デザインを除く)
- 独立して取引の対象とならないもの
- 生き物
- 外から見えないもの
- 液体、気体
- タイプフェース
- 物品が特定されない抽象的なモチーフ
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06意匠登録されるまでの期間
特許庁へ願書を提出した後、平均で6~7ヵ月程度で意匠登録されます。
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07意匠権の存続期間(権利の有効期間)
意匠権の存続期間は意匠登録出願の日から最長25年です。
意匠権を維持するには印紙代を納める必要があります。
「第1年から第3年の印紙代」は1年あたり8,500円、「第4年から第25年の印紙代」は1年あたり16,900円です。
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08意匠登録の要件(意匠登録されるための条件)
意匠登録されるには、特許庁の審査にパスする必要があります。審査される要件は複数ありますが、主な要件は次の3つです。
新規性(その意匠が今までにないものか)
意匠登録出願される前に、既にその意匠と同じ/似ている意匠が世の中に公開されていると、原則として意匠登録が認められません。
開発した製品・商品を意匠登録出願前に公開(発表や販売など)してしまうと、原則、意匠登録できなくなってしまうということです。
もっとも、公開から1年以内であれば、「新規性喪失の例外手続」をすることで意匠登録が認められる可能性があります(ただし、条件があります)。
先願(特許庁へ、いち早く出願したか)
同じ/似ている意匠について、複数の意匠登録出願があった場合は、最先の意匠登録出願人の出願(同日のものはいずれか一方)のみが意匠登録となります。
創作非容易性(創作レベルが低くないか)
世の中にその意匠と同じ/似ている意匠が存在しなくても、簡単に創作できてしまう意匠だと意匠登録が認められません。
既にあるデザインから容易に考えつくようなデザインでは、意匠登録できないということです。
例えば、以下に挙げた意匠は「創作非容易性」に該当してしまう可能性が高くなります。
■置き換えの意匠
- 例)公開されているフライパンの蓋を、ほとんどそのまま他のフライパン用蓋に置き換えて表したにすぎない「フライパン」の意匠
■寄せ集めの意匠
- 例)公開されているスピーカーボックスの上に、それとは別の公開されているスピーカーボックスを寄せ集めた(組み合わせた)にすぎない「スピーカーボックス」の意匠
■一部の構成の単なる削除による意匠
- 例)公開されているボールペン(5つの部品から構成されている)から1つの部品を削除して、4つの部品からなるボールペンとして表したにすぎない「ボールペン」の意匠
■<配置の変更による意匠
- 例)公開されているイコライザー付増幅器(上部が「イコライザー表示部」、下部が「増幅用操作部」により構成)の、上部と下部の配置を変更したにすぎない「イコライザー付増幅器」の意匠
■連続する単位の数の増減による意匠
- 例)公開されている回転警告灯(3つの灯部(3段)より構成)の、段数を1段に減らして表したにすぎない「回転警告灯」の意匠
■物品等の枠を超えた構成の利用・転用による意匠
- 例)クロード・モネの絵画「印象・日の出」を、ほとんどそのまま包装紙として表したにすぎない「包装紙」の意匠
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09意匠の種類
ニーズや目的に応じて、適切な意匠を選んで権利化することが重要です。
■全体意匠
- 物品全体のデザインを保護します。
■部分意匠
- 物品の「部分」にデザインの特徴がある場合、その「部分」のデザインを保護します。
■画像の意匠
- 「機器の操作の用に供される画像」や「機器がその機能を発揮した結果として表示される画像」のデザインを保護します。
■関連意匠
- 一つのデザインコンセプトから生まれたバリエーションの意匠(関連する意匠群)を関連意匠として保護します。
■組物の意匠
- 全体として統一感があるデザインが施された物品群を組物の意匠として保護します。
■動的意匠
- 物品の有する機能に基づいて物品の形態が変化する場合、その変化の状態を動的意匠として保護します。
■秘密意匠
- 意匠権の設定登録日から最長3年間、その登録意匠の内容を秘密にできます。
■建築物の意匠
- 不動産である建築物のデザインを保護します。
■内装の意匠
- 複数の物品、壁、床、天井等から構成される内装のデザインを保護します。